-恋-
kohishi

花を詠める

風に散る 花橘を袖に受けて 君が御跡と思ひつるかも

 (風に散る花橘を袖に受けとめて、去っていった方の名残としてお慕いすることよ)
<巻十 夏の雑歌>

 


大伴坂上郎女

いふ言の恐き国そ 紅の色にな出でそ 思ひ死ぬとも

(人の噂の恐ろしい国です。あざやかな紅の色のように顔に出さないでください
たとえ恋慕って死ぬようなことがありましても)
<巻四 相聞>

 


雪を詠める

梅の花 降り覆ふ雪をつつみ持ち 君に見せむと取れば消につつ

(梅の花を覆い降る雪を手に包みもって、君に見せようと取ると消え、取ると消えして・・・)
<巻十 春の雑歌>

 

 


山部宿禰赤人

わが背子に見せむと思ひし梅の花 それとも見えず 雪の降れれば

(いとしい人に見せたいと思っていた梅の花は、どこにあるともわからない。
雪が一面に降り積もってしまったので)

<巻八 春の雑歌>

 


草に寄せたる

道の辺の 尾花が下の思ひ草 今さらさらに 何をか思はむ

(道のほとりの尾花(ススキ)の下で咲いている思い草のように、
今さら改めて何を想いましょうか)

<巻十 秋の相聞>

 


 

花に寄せたる

恋ふる日のけ長くあれば み苑生の 韓藍の花の色に出でにけり

(恋しく思う日々が長く続いたので、あの御苑に咲く韓藍の花のように
色に出てしまったことだ)

 <巻十 秋の相聞>